白糸刺しゅう

マウントメリック刺しゅう アイルランドの白糸

パントン久美子

白糸刺しゅうってほんとにいろんな刺しゅうがあります。9月から木村麻里子先生のマウントメリックのZoomレッスンを受講しています。今日はマウントメリックについての記事です。

白糸刺しゅうを刺している人でも、マウントメリックをご存知ない方も多いので、この記事を読んでマウントメリックに興味を持っていただけたら嬉しいです!

マウントメリック刺しゅうとは?

マウントメリックはアイルランドのマウントメリック地方発祥の白糸刺しゅうです。アイルランドは厳しい歴史を持った国です。歴史に疎い私でもアイルランドといえば独立戦争や内戦というキーワードが頭に浮かびます。

マウントメリック刺しゅうは、1820年頃にジョアンナ・カーターさんという方が発案し刺されたものです。白い布に白い糸で刺し、モチーフはマウントメリックに生息するシダやべりーなどの植物がほとんど。

アイルランドは1845年〜大飢饉に見舞われます。この時に、現金を稼ぐ手段として使われたのがマウントメリック刺しゅうでした。一旦衰退してしまうのですが、1970年代にシスター マーガレット・マッカーシーさんがマウントメリック刺しゅうのことを知り、技術を保全するために地域の人に広めた刺しゅうとなります。

マウントメリックの特徴

マウントメリックの発祥の地のアイルランドまで行ってきた木村先生曰く、マウントメリックは必ず白い布に白い糸で刺さなくはならないそうです。

18世紀にマウントメリックにクエーカー教徒の人が住み始めて、工業化をしたためにマウントメリックはすごく豊かになったそうです。クエーカー教は、キリスト教の一派でイギリスで発祥した宗派です。ローマカトリックが嫌になった人たちが、宗教戦争を起こしてプロテスタントができたわけですが、クエーカー教の人はプロテスタントの人よりもさらに華美なことを嫌うそう。

クエーカー教の人によってマウントメリックが発展したこともあり、刺しゅうも質素な感じが好まれたのですね。なので、色布や色糸は絶対に使わないそうです。

ちなみに、白糸刺しゅうはリネンに刺すのが一般的ですが、マウントメリックは綿の布に綿の糸で刺します。面白いですよね〜!

マウントメリックを刺してみての感想

まだレッスンは続いているのですが、何度かマウントメリックを刺してみての感想です。

すごい面白い!というのは、今まで刺したことがないタイプの刺しゅうなので、こんな刺し方するの〜?という楽しい驚きがありました。

マウントメリックのステッチは、フランス刺しゅうのようなステッチの変化球版という感じで、チェーンステッチの周りに何かついたり、マウントメリックの技術があると表現の幅が広がるなと感じました。

マウントメリックは、ドロンワークと一緒には刺さないのがルールだそうです。下の方にフリンジが付いていることが多いのですが、これは重さを出すためとのこと。ヘデボのように縁飾りを刺したりもしないそう。あまり華美にならない、ということが大事なようです。

布は前述のとおり綿です。すごい分厚いデニムみたいな布を使うのです。なので、手がめちゃ疲れます。普通にペンチとか必要なレベルで、布に針が通りません。でも、すごい頑丈だそうです。洗濯機で洗濯してもゴシゴシこすってもOK。白糸刺しゅうの作品を洗濯機で洗うとか、絶対に無理!という感じなのですが、マウントメリックは洗濯機でガシガシあらってもびくともしないそうです。

ということで、日常生活に非常に取り入れやすい刺しゅうだと思います。テーブルクロスとかお食事用のクロスとか、お洗濯を頻繁にするようなものにも安心して刺せますね。

これは木村先生のレッスンで作ったかぼちゃ。もう少しでハロウィンなので、今年はこのエレガントなかぼちゃでハロウィンを楽しもうと思います!

いろんな白糸刺しゅうがありますね!玉椿さんでマウントメリックの本の中が少し見れるので、興味のある方はこちらを見てみてくださいね。

ABOUT ME
パントン久美子
パントン久美子
デンマーク在住 白糸刺繍家
2009年スカルス手工芸学校に留学しヘデボを学ぶ。2012年〜2017年まではパリ在住。ルサージュやフランスの白糸刺繍教室で刺繍を学ぶ。2024年7月文化出版局より「whitework ヨーロッパの白糸刺繍技法より」を出版。現在はコペンハーゲン在住。
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